世の終わりの為の四重奏曲 解説10

音坊主2017リハーサル始まりました!
お席も残り僅かとなっています。
チョウ難しい6楽章の解説どうぞ!聴き手にとっては楽しいかも。

6)<7つのトランペットのための狂乱の踊り> 
 いよいよ<世の終わりのための四重奏曲>でも最も有名な、恐怖の第6楽章に到達しました。実はこの楽章、音楽大学などのソルフェージュの授業で取り上げられる率が極めて高いことでも知られており、「毎週大体どこかの教室からは聞こえてくる」という声が聞かれるほどです。最初から終わりまでずっと全員がユニゾン(メシアン先生、何と大胆な!)で、変拍子+添加価値による複雑なリズムをもった旋律群を次々と奏でるため、ソルフェージュの訓練には最適な教材なのです。メシアンによれば、黙示録で御使たちの吹き鳴らす7つのラッパ(様々な破局をもたらす6つと、神の奥義の成就を告げる最後の1つ)の振る舞いを装うというこのメロディ、「移調の限られた旋法」第3番及び第2番を用いて書かれていますが、とにかく一度耳にしたら忘れられないインパクトを有しています。
 曲は大きく3つの部分に分かれ、第1部ではこの主題旋律群(全部で6種類ほどの楽節が順に提示されますが、<譜例1>上段に挙げてあるのはそのうち始めの2つです)によるフォルティッシモの激しいダンスが繰り広げられます。途中、7つの非可逆リズムを連ねた計57音より成るリズム・ペダルをピアニッシモ・レガートで奏するパッセージが差し挟まれるのですが、その旋律線は12半音全てを使用する16の音高の反復となっており、第1楽章と同様にリズムの反復単位からは独立しています(<譜例2>)。
 速度を若干増した第2部では、主題旋律群は16分音符を中心に用いて時間的に縮小された形で提示されます(<譜例1>中段)。ここにギリシャの韻律では「クレティコス格」と呼ばれる長・短・長格のリズム・モティーフが幾度も挿入されるのですが、このモティーフは様々な比率によって間断なく拡大・縮小されるのが特徴的です(<譜例3>)。
 終盤の短い第3部では、速度を大きく落とした主題旋律が時間的にも空間的にも大きく拡大されて凄まじいフォルティッシモの雄叫びへと変容した(<譜例1>下段)後に、第1部の非可逆リズムや結句が短く回想されてこの楽章を閉じます。
 この苛烈極まる音楽について、メシアンは「素晴らしい花崗岩模様の音色による、石質の音楽。鋼鉄の、緋色の憤激の巨大な塊の、凍りついた陶酔の抑えがたい運動」と大変詩的に形容しています。文章 夏田昌和

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Violinist 蓑田真理 Official Web Site

バイオリニスト蓑田真理 Mari Minoda : 古典音楽から、新作初演までバロックバイオリンとモダンバイオリンを演奏する他ソロ、室内楽、オーケストラ等で幅広く活動中。国内外を行ったり来たり、ジャンルも行ったり来たり。2019年〜London →→2024年日本に完全帰国。主に東京、関西で活動中。  お問い合わせ MAIL:minoda.violin@gmail.com