クロード・ル・ジュヌ:シャンソン集「春」より「また春がきた」
Claude Le Jeune : “Revecy venir du Printans”, extrait du recueil
pf.vn.vc.cl版(編曲:夏田昌和)
クロード・ル・ジュヌ(1530頃~1600)は後期ルネッサンス時代のフランス・フランドルの作曲家。カトリックとプロテスタントが40年近くも争い続けたユグノー戦争渦中のパリに移り住んだル・ジュヌは、当初プロテスタント系貴族の庇護を受けていたが、聖バルテルミの虐殺を免れた後にアンジュー公フランソワの宮廷学長となり、最晩年にはブルボン王朝初代のフランス国王アンリ4世によって王室楽団の常任作曲家に任命された。シャンソンや詩編曲、モテットなどに多くの作品を残した彼は、詩と音楽の融合を目指し古代風韻律音楽をフランス語で蘇らせるという目的をもって1570年に設立された芸術家組織「詩と音楽のアカデミー」の一員としても活発に活動していた。
39曲から成る<春>は、プレイヤード派と称していた彼の詩人仲間の一人バイーフの詩に作曲されたア・カペラのシャンソン集で、長短音節の様々な組み合わせから成る古代ギリシャ詩風の韻律を最大限に活かしつつ、概ねホモリズム的なポリフォニーで作曲されている。メシアンは、音楽院のデュカの作曲のクラスに在籍していた20歳の頃にこの作品の楽譜とたまたま出会い、近現代音楽の変拍子と見まがうような複雑な韻律をもつ音楽に強く惹きつけられたという。以来、自身の楽曲分析のクラスでも幾度となく取り上げ、全7巻に及ぶ理論書「リズム教程」でも1つの章をこの楽曲の分析に割いている。
<また春がきた>は曲集の2曲目にあたるもので、常に5声部で歌われるルシャン(ルフラン)の間に、2声、3声、4声、5声と毎回声部の数を増やしていくシャン(クープレ)が挟まれていく。詩と音楽の韻律は一箇所を除き、短・短・長・短・長・短・長・長 という一種類で貫かれている。ルシャンで繰り返されるテキストは「また春がきた すばらしい恋の季節が」というもので、それ以外のシャンの部分でも春の美しく陽気な田園風景と恋愛の喜びが朗らかに詠われており、明るく愉しい曲調はその内容をよく反映したものとなっている。
解説 編曲 夏田昌和
Violinist 蓑田真理 Official Web Site
バイオリニスト蓑田真理 Mari Minoda : 古典音楽から、新作初演までバロックバイオリンとモダンバイオリンを演奏する他ソロ、室内楽、オーケストラ等で幅広く活動中。国内外を行ったり来たり、ジャンルも行ったり来たり。2019年〜London →→2024年日本に完全帰国。主に東京、関西で活動中。 お問い合わせ MAIL:minoda.violin@gmail.com
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